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遠投と球速の関係は?「遠投が得意なら球も速い」は本当か、研究と計算で解説

公開 2026.10.26投手専門コーチ 野村亮太

雲の広がる午前の広いグラウンド。人はおらず、手前の芝の上に白い野球ボールが1つ置かれ、奥へ向かってフィールドと遠くのフェンスが長く続いている。「遠くへ投げる」距離感をあらわす情景

「遠投が得意な子は、やっぱり球も速いの?」——そんな疑問をお持ちの保護者の方へ。

こんにちは。投手専門オンライン野球塾・投Laboの野村亮太です。元独立リーグの左腕で、今は小・中学生のピッチャーを専門に見ています。

結論: 遠投の距離と球速には、たしかに関係があります。ただし「距離=球速」ではありません。

研究では「中くらいの関係」。遠投が得意な子ほど速い傾向はありますが、距離だけで球速は決まりません。

「遠投70メートルなら球速◯キロ」という換算も、あくまで目安。その理由まで、やさしく解説します。

この記事でわかること:

  • 遠投と球速はどのくらい関係するのか(研究データ)
  • 「遠投◯メートル=球速◯キロ」の計算と、当てにならない理由
  • 球速につながる遠投のやり方と、家でできるチェック

遠投と球速の関係は?「関係はあるが、距離だけでは決まらない」

まず、検索している方がいちばん知りたい答えから。

遠投と球速には、関係があります。ただし「遠投の距離が長い=球速が速い」と、そのまま言えるわけではありません。

中国のプロ野球の投手27人を調べた研究(Yang・Wang, 2024)では、最大の遠投距離と球速の関係は相関係数0.63くらいでした。

相関係数は、2つの数字がどれくらい連動するかを表したものです。ふつう−1から1の間で表します。

今回のようにプラスなら「片方が大きいほど、もう片方も大きい」という関係。1に近いほど、その連動が強いことを意味します。0.63は「中くらいの関係」です。

つまり、遠投が得意な投手ほど球が速い「傾向」はある。でも「遠投がいちばんの選手が、必ず球速もいちばん」ではない、ということです。

ただし、この数字はプロの大人の投手のデータです。小・中学生でも同じ強さで当てはまるかは、まだ分かっていません。

円グラフ。遠投の距離で説明できる球速のちがいは約4割、残りの約6割は距離だけでは説明できない分であることをあらわしている

この研究の数字から計算すると、遠投の距離で説明できる球速のちがいは、だいたい4割ほどです。

残りの約6割は、この数字だけでは説明できません。フォーム・体格・成長の段階など、ほかの要素も関わっていると考えられます。

だから「遠投を伸ばせば、それだけで球が速くなる」とは言い切れないのです。学年ごとの球速の目安はピッチャーの球速の平均は?もあわせてどうぞ。

「遠投が得意なら球も速い」のは、なぜ?

では、なぜ遠投と球速は関係するのでしょうか。

理由は、どちらも「全身を使って投げる」からです。

速い球も、遠くへ飛ぶ球も、力の出どころは同じです。

地面 → 足 → 腰 → 胸 → 腕 → ボール

この順で、バケツリレーのように力を伝えていきます。

遠くへ投げるには、この全身のバケツリレーが上手でないと届きません。だから遠投が上手な子は、球速の「土台」もできていることが多いのです。

先ほどの研究でも、遠投は「下半身・体幹・腕をまとめて使うので、球速を上げる土台づくりに役立つ」とまとめられています。

肩の強さと球速の関係は肩が強いと球は速い?でくわしく解説しています。

ただし、くり返しになりますが、土台があっても球速が決まるわけではありません。土台の上に「低く・前へ・速く」投げる技術が乗って、はじめて球速になります。

「遠投◯メートルなら球速◯キロ」は言い切れる?計算と、ズレる3つの理由

ネットには「遠投70メートル=球速◯キロ」のような換算表があります。これはどこまで当てになるのでしょうか。

ここは少し計算の話になります。数字が苦手な方は、「あくまで目安」という結論だけ読んでいただければ大丈夫です。

まず、物理の計算で考えてみます。「初速」とは、ボールが手を離れた瞬間の速さのことです。

空気の抵抗がなく、45度の角度で、同じ高さから投げたと仮定すると、飛距離はこう決まります。

飛距離 ≒ 初速×初速 ÷ 9.8(重力)

この式で計算すると、こうなります。

  • 飛距離50メートル → 初速 約22m/秒 ≒ 約80km/h
  • 飛距離70メートル → 初速 約26m/秒 ≒ 約94km/h

放物線の図。ボールを45度で投げたときの軌道と、理想の計算式(飛距離≒初速×初速÷9.8)を示し、実際とズレる3つの理由(空気の抵抗・投げる角度と高さ・助走)を注意書きとして添えている

ただし、この数字は「理想の計算」です。実際とはズレます。理由は3つ。

  1. 空気の抵抗:本物のボールは空気で失速します。だから実際に70メートル投げるには、計算より速い初速が必要です。
  2. 投げる角度と高さ:人は45度ちょうどでは投げません。肩の高さ(地面より上)から離します。
  3. 助走とステップ:遠投は助走や大きなステップで勢いをつけられます。マウンドの投球とは条件が違います。

だから「遠投◯メートル=球速◯キロ」と言い切る早見表は、目安にしかなりません。出どころのはっきりしない換算表は、うのみにしないでください。

そもそも、遠投の初速(やや上に投げる速さ)と、マウンドの球速(低く前へ投げる速さ)は別物です。球速そのものを知りたいときは球速の正しい測り方を参考にしてください。

やりがちな間違い:遠投の「距離」を競うと、投球とは動きが変わる

「何メートル投げられた」を競うと、子どもは山なりの遠くへ投げたくなります。でも、ここに落とし穴があります。

大学の投手17人で、マウンドの投球と平地の遠投(約37メートル・55メートル・最大距離)を比べた研究(Fleisig ら, 2011)があります。

この研究が調べたのは「体の動き」と「関節にかかる力」です。わかったことは、こうです。

  • 低く強く投げる遠投(約37〜55メートル)は、マウンドの投球と体の動きがよく似ていた。
  • 最大の飛距離をねらう山なりの遠投は、動きが変わった。

山なりの遠投では、こんな変化が起きていました。

  • 体が前へ倒れる角度(ボールを離す瞬間)が小さくなる(55メートルで約25度→最大距離で約18度)
  • 肩の外ひねり(腕を後ろへ大きくねじる動き)が最大になる
  • 肘や肩にかかる「ひねる力」も、平均が最大になった
くらべる点低く強い遠投(〜55m)山なりの最大遠投
体の動きマウンドの投球に近い投球と変わる
リリースの前傾保たれる(約25度)小さくなる(約18度)
肘・肩のひねる力投球と同じくらい平均が最大になった
使い方練習に取り入れやすい本数を決めて慎重に

ただし、この研究は「体の動き」を比べたもので、どの投げ方が球速アップの練習として優れるかまでは調べていません。そこは正直に分けてお伝えします。

それでも、先ほどのプロ投手の研究では「遠投を120フィート(約37メートル)までに制限し、山なりではなくまっすぐ投げさせるチームがある」とも紹介されています。

少なくとも、「何メートル飛ばせたか」を競うより、投球に近い「低く・強く・まっすぐ」を大事にする。このほうが、体の動きとしては理にかなっています。

遠投の練習のやり方は遠投は球速アップに効く?でくわしく説明しています。

家でできるセルフチェック:球速につながる遠投になっている?

お子さんの遠投が「速い球の土台」になっているか、家で確かめてみましょう。

横から、10球ほど投げる様子を見てください。見るのは「弾道(ボールの高さ)」です。

  • 10球のうち、多く(目安は8球くらい)が、相手の胸〜頭の高さへ、低いライナーに近い弾道で届いているか。
  • 山なりで最後にストンと落ちる球が多いなら、「距離をかせぐ遠投」になっているサイン。
  • 投げたあと、体が前(捕手側)へ自然に進んでいるか。のけぞって止まっていないか。

ここで「山なりになる」クセが見つかっても、あわてなくて大丈夫です。山なりになる理由はさまざまで、わざと角度をつけているだけのこともあります。

体の使い方でいうと、たとえば——

  • 胸(上半身)が早く正面を向いてしまう
  • ふみ出した足で、しっかり踏ん張れていない
  • 下半身を使えず、腕の力だけで投げている

といった点が、低いボールを投げにくくすることがあります。どれが当てはまるかは、見ただけでは分かりにくいものです。動画を止めて見ないと、正確にはわかりません。

まずはスマホで、横から・後ろからの2方向で撮ってみてください。スマホでのフォーム撮影のコツも参考になります。

球速につながる遠投の練習(家と広場でできる4つ)

広い公園で、手前に子どもの後ろ姿、少し先に保護者が立ち、低い弾道で遠くへキャッチボールをしている様子。無地のユニフォームで、顔は写っていない

距離を競うのではなく、「低く・強く・まっすぐ」を身につける練習です。

※回数や距離は目安です。お子さんの年齢・体力に合わせて加減してください。

① 低いライナー・キャッチボール(30〜40m)

相手の胸をめがけて、低くまっすぐ強く投げます。

  • 回数:10球×2セット。
  • 親のチェック:弾道が山なりになっていないか。
  • できているサイン:ボールが胸の高さに、まっすぐ届く。

② 距離を3段階で上げる遠投

近い→中くらい→少し遠く、と3段階で距離を伸ばします。どの距離でも低く強く。

  • 回数:各距離5球ずつ(合計15球)。
  • 親のチェック:距離を伸ばしても弾道が高くなりすぎないか。
  • できているサイン:遠くでも低いライナーを保てる。

③ 止まって投げる(助走なし)

助走をつけず、立った所から投げます。下半身と体の回転だけで勢いを出す練習です。

  • 回数:10球×1セット。
  • 親のチェック:腕だけで投げていないか。
  • できているサイン:助走なしでも、ボールに勢いがある。

④ 全力の遠投は「本数」を決める

最大の飛距離をためす遠投は、本数を決めてからにします。全力の遠投も「投球数」に数えましょう。

  • 回数:先に本数を決める(例:数球〜10球ほど)。チームの練習や試合とあわせて管理する。
  • 親のチェック:疲れてフォームがくずれていないか。
  • できているサイン:決めた本数で、きちんとやめられる。

遠投をするときの安全の注意

全力の遠投は、肩や肘にかかる力がとても大きくなります。先ほどの研究でも、最大距離の遠投で肘・肩の「ひねる力」が最大になっていました。

ですから、全力の遠投も投球数に数えて、本数と投げる間隔を管理してください。

そして、肩や肘に痛みがあるときは、投げるのをやめて整形外科へ。これがいちばん大事です。

速さや飛距離より先に、まず一生投げ続けられる体。その順番は変わりません。


遠投と球速には関係がありますが、距離だけでは決まりません。

お子さんの遠投が「速い球の土台」になっているか、山なりで距離をかせぐクセがついていないか——これは動画を見ると、体の動きや、どこから直すとよいかが見えてきます。

投Laboでは、元独立リーグの左腕で投手専門のコーチ(=私)が、お子さんのフォームを動画で分析します。根性論ではなく、体の使い方と怪我の予防から、いちばん直すとよい課題を1つにしぼってお伝えします。

初回の動画分析は無料です。まずはお子さんのフォームを見せてください。

→ 無料でフォーム分析を受けてみる

まとめ

  • 遠投と球速には「中くらいの関係」がある。遠投が得意な子ほど、球が速い傾向はある。
  • でも「遠投◯メートル=球速◯キロ」は言い切れない。あくまで目安。
  • 距離を競うより、「低く・強く・まっすぐ」。全力の遠投は本数を管理する。
  • 山なりになる原因は子によって違う。正確には、動画を見て確かめる。

よくある質問

Q. 遠投は何歳から始めていいですか?

キャッチボールができれば、低く強く投げる遠投は小学生でも取り入れられます。ただし最大の飛距離を競う遠投は、体への負担が大きいので、本数を決めて慎重に。痛みがあるときはやめてください。

Q. 遠投は毎日やってもいいですか?

投げすぎは肩・肘の故障につながります。日本臨床スポーツ医学会は、小学生は練習を週3日以内、中学生以上は週1日以上の完全休養をすすめています。

全力の遠投は投球数に数え、チームの練習や試合とあわせて、休む日をしっかり作ってください。くわしくはピッチャーの休養日の目安もどうぞ。

Q. 遠投が苦手でも、球は速くなりますか?

なります。遠投と球速は「中くらいの関係」で、距離だけで球速は決まりません。低く・前へ・速く投げる技術や、下半身の使い方で球速は伸びます。遠投が苦手でも心配しすぎないでください。

Q. 遠投の距離がなかなか伸びません。どうすればいいですか?

距離そのものを追うより、まず「低く強いボール」を安定させるのが近道です。全身の使い方が整うと、結果として距離も伸びます。遠投は球速アップに効く?もあわせてどうぞ。

Q. 室内でも遠投の代わりになる練習はありますか?

タオルを使ったシャドーや、壁あてのキャッチボールで「低く前へ振り切る」感覚は養えます。ただし全身で遠くへ投げる感覚は屋外でしか得られないので、室内はあくまで補助と考えてください。