投球の「タメ」とは?「タメがない」と言われた子に親ができること

「タメがない」と言われても、どうすれば…
お子さんが、コーチからこう言われたことはありませんか。
- 「投げるときにタメがない」
- 「もっと下半身にためて投げなさい」
- 「突っ込むな、我慢しろ」
野球経験のない親御さんにとって、「タメ」はいちばん分かりにくい言葉かもしれません。
意味も直し方も分からないまま、ただ「タメを作りなさい」と伝えてしまう。
そんな声を、私はよく耳にします。
この記事では、「タメ」とは何かを、できるだけやさしくお伝えします。
元独立リーグの左腕投手として
はじめまして。投Laboの野村亮太です。浦和学院、大東文化大学を経て、独立リーグ(プロ野球とは別の、地域に根ざしたプロリーグ)で左投げの投手としてプレーしていました。
体が大きいわけでも、力が強いわけでもありません。
それでも投げてこられたのは、ためた力を最後に一気に伝える体の使い方を覚えたからです。
だからこそ、「タメ」は根性ではなく体の順番で決まると、身をもって知っています。
結論: 「タメ」とは、軸足に立って体重(力)を後ろに残し、体を早く開かず、最後の一瞬で一気に解き放つことです。
- 「タメがない」の正体は、多くが突っ込みと体の開きが早いこと
- タメが抜けると、球速もコントロールも落ち、腕への負担も増える
- タメは「作ろう」と意識するより、下半身が使えた結果として自然に生まれる
- タイミングは動きの中にあり、動画で見るのが確実です
そもそも「タメ」とは何か
「タメ」とは、投げる前に体の中に力をためておくことです。
もう少しくわしく言うと、こうなります。
軸足(後ろの足)にしっかり立ち、体重を後ろに残したまま、キャッチャーへ体を移していく。
このとき、体はまだ前や横を向いていません。
そして、ためた力を最後の一瞬でボールに解き放つ。
この「ためて→最後に一気に」という間(ま)が、タメの正体です。
イメージは、ゴムやバネに近いものです。
ぐっと縮めてからはなすと、大きな力が出ますよね。
投球のタメも、これと同じ仕組みなのです。
体重を後ろに残す感覚は、下半身の使い方や軸足の使い方ともつながっています。
「タメがない」の正体は、突っ込みと開き
では、「タメがない」とはどういう状態でしょうか。
多くの場合、原因は次の2つです。
① 突っ込み
体(とくに頭)が、早く前へ出てしまう状態です。
軸足でためる前に前へ流れるので、力が抜けてしまいます。
② 体の開きが早い
胸やお腹が、早くキャッチャーの方を向いてしまう状態です。
ためた力が、ボールを投げる前に逃げてしまいます。
どちらも「ためる前に、力を先に使ってしまう」ことが共通点です。
体の開きについては、体が開く原因と直し方でもお伝えしています。
タメが抜けると、何が起きるのか
タメが抜けると、主に3つのことが起きます。
| 起きること | なぜそうなるか |
|---|---|
| 球速が上がらない | ためた力を使えず、腕の力だけで投げるから |
| コントロールがばらつく | 体が早く動き、ボールを離す位置が安定しないから |
| 肩やひじに負担がかかる | 下半身の力を使えず、腕だけでカバーするから |
とくに気をつけたいのが、3つ目です。
タメがないフォームは、腕に頼る投げ方になりがちです。
腕だけで無理に速さを出そうとすると、肩やひじを痛める原因にもなります。
だから「タメ」は、速さだけでなくケガの予防にも大切なのです。
図解:タメができるまでの流れ
タメは、一つの動作ではなく「順番」でできています。
次の図は、タメができるまでの流れをまとめたものです。
流れは、次の4つの順番です。
- ① 軸足で立つ
- ② 体重を後ろにためる
- ③ 開きを我慢する
- ④ 最後に一気に解く
大事なのは、①〜④の順番です。
とくに③の「我慢」ができないと、②でためた力が抜けてしまいます。
逆に、順番どおりに進めば、力は自然に指先まで伝わります。
家でできる、タメを育てる4つの関わり方
「タメを作れ」と言葉で伝えても、なかなか伝わりません。
タメは、体の土台ができて自然に生まれるものだからです。
家では、次の4つを意識してみてください。
① 軸足で、ぐらつかずに立つ
片足で立つバランス練習が役立ちます。
軸足が安定すると、体重を後ろに残しやすくなります。→軸足の使い方
② 体を早く開かない
胸をできるだけ長く、投げる方向と反対に向けておく意識です。
ただし、我慢しすぎて体が固まると逆効果になります。→体の開き
③ 力を抜く
力むと、体が早く動いてタメが消えます。
「8割の力」で投げるほうが、かえってタメは効きます。→力を抜くと速くなる理由
④ ゆっくり動作で順番を確かめる
鏡の前や、ボールを投げずに投球の動きだけをまねる「シャドーピッチング」で、①→②→③→④の順番をゆっくりなぞります。
速く投げるより、順番を体に入れるほうが先です。
どれも、「ためろ」と言葉で言うより効果があります。
「もっとためろ」がうまくいかない理由
「もっとためろ」「長くためろ」と言うと、逆効果になることがあります。
タメを長くしようと意識すると、体が固まって力んでしまうからです。
すると、かえってタメが消えてしまいます。
大切なのは、タメの「長さ」ではありません。
軸足で立つ→我慢する→最後に一気に、という順番とタイミングです。
また、タメを作ろうとして歩幅を大きく広げすぎるのも注意が必要です。
無理に広げると、体が早く開いて突っ込みやすくなります。→投球の歩幅
タメは「作る」より「順番と脱力で自然に生まれる」もの。そう考えると、力まずに取り組めます。
投Laboが大切にしていること
「タメ」は、気合いで生み出すものではありません。
正しい順番と脱力から、自然に生まれるものです。
だから投Laboでは、こう考えています。
- 一度に直そうとせず、課題は1つずつ
- 「もっと力を」ではなく「力を抜いて順番どおりに」
- 速さの前に、まずケガをしない体の使い方から
遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。
タメは「動き」だから、動画でしか見えない
ここまで読んで、こう思ったかもしれません。
「うちの子は、タメがあるのかどうか分からない」
じつは、これがいちばん大事なところです。
タメは、止まった写真では見えにくいものです。
**軸足で立ってから、力を解き放つまでの「流れ」**の中にあるからです。
しかも、タメが抜ける原因は子どもによって違います。
ある子は突っ込み、ある子は開きが早く、ある子は力みすぎ。
同じ「タメがない」でも、直すところは一人ひとり違うのです。
だからこそ、まずは動画で「どこで力が抜けているか」を見るのが確実です。
投Laboでは、無料の動画フォーム分析を行っています。
お子さんの投球動画を送っていただければ、タメが抜けているポイントと、家でできる練習を、やさしい言葉でお返しします。
「タメがない」と言われて悩む前に、まずは今のフォームを一緒に見てみませんか。
撮り方に迷ったら、スマホでの投球フォームの撮り方も参考にしてください。
まとめ
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 「タメ」とは、軸足に立ち体重を後ろに残して、最後に一気に解き放つこと
- 「タメがない」の正体は、多くが突っ込みと体の開きが早いこと
- タメが抜けると、球速・コントロールが落ち、腕への負担も増える
- 「もっとためろ」より、軸足・脱力・順番を整えるほうが効く
- タメは動きの中にあり、原因は子どもで違う=動画で見るのが確実
「タメ」は、野球のなかでも分かりにくい言葉です。
でも、仕組みが分かれば、家でもできることはたくさんあります。
あせらず、1つずつ整えていきましょう。
よくある質問
Q. タメは何歳から意識させるべきですか?
年齢よりも、まず軸足でまっすぐ立てるかどうかが先です。小学生のうちは「ためる」より「軸足で立つ」「力を抜く」を優先しましょう。むずかしい言葉で意識させると、かえって力んでタメが消えてしまいます。まずは下半身の使い方から始めるのがおすすめです。
Q. 「タメを長く」と言われましたが、正しいですか?
タメは長さではなく、順番とタイミングが大切です。長くしようと意識すると体が固まり、逆にタメが抜けてしまうこともあります。まずは軸足でぐらつかず立つこと、そして力を抜くことを優先しましょう。
Q. 家で親が教えても大丈夫ですか?
はい。ただし「ためろ」と言葉で直そうとしないのがコツです。片足で立つバランス練習や、力を抜く練習など、土台づくりを手伝うイメージがおすすめです。細かいフォームの修正は、動画で客観的に見てからのほうが安全です。
Q. タメがないと、ケガをしやすいですか?
タメがないと腕だけで投げがちになり、肩やひじの負担が増えることがあります。痛みが出る前に、体全体を使ったフォームに整えることが予防につながります。もし痛みがある場合は、練習を止めて整形外科など専門家に相談してください。