「全力で投げるな」は本当?力みと球速の本当の関係を元独立リーグ左腕が解説【小・中学生】

「もっと全力で投げろ!」「力を抜け!」——少年野球では、正反対の声が両方聞こえてきますよね。どちらを信じればいいのか、迷う保護者の方も多いと思います。
こんにちは。投手専門オンライン野球塾・投Laboの野村亮太です。元独立リーガーの左投手として、また指導者として、ずっと「力まないこと」を大切に伝えてきました。
私自身、現役時代に"気合いで全力"を続けてフォームを崩した経験があります。この記事では、研究でわかっていることと、私の指導の見立てを分けてお伝えします。
結論: 力を抜くと球速は少し下がりますが、下がり方は小さく、半分の力のつもりでも約85%出ます(高校生の研究)。
- 大切なのは「全力かどうか」より、力みで動きの順番(下半身→体→腕)が崩れていないか。
- 力を抜いても、ひじには全力のときの約75%の負担がかかる。だから軽く投げた球も、投げすぎを防ぐために球数に数える。
「全力」と「球速」の本当の関係
力の入れ具合を変えて投げてもらい、球速とひじの負担を測った研究があります。高校生の投手10人を調べたものです(Fiegenら、2023年)。
本人の感覚で「半分」の力でも、球速は全力の約85%出ていました。ひじの負担も約75%と、あまり減っていません。
ここからわかることは、2つです。
- 全力の「感じ」と、実際の速さは同じではない。
- 力を抜いても、ひじの負担は思ったほど減らない。
なお、これは高校生の研究です。85%・75%という数字を、そのまま小・中学生に当てはめることはできません。
ただ、10〜14歳の投手33人を調べた学会発表もあります(Maezawaら、2025年。論文になる前の発表です)。
半分のつもりで投げたときのひじの負担は、全力のときの半分を大きく上回っていました。
「力」と「力み」は別のもの
ボールを速く投げるには、もちろん力が要ります。気をつけたいのは、必要のない所まで固まる「力み」です。
ここからは研究で確かめられた話ではなく、私が指導の中で見てきたことです。力んでいる子には、こんな様子がよく見られます。
- 投げる前から肩がすくんで、首が短く見える
- 腕だけを速く振ろうとして、下半身との順番がばらばらになる
- 投げ終わりにぐらついて、毎回フォームが変わる
速い球は、下半身→体→腕と、順番に力が伝わる流れから生まれます(くわしくは球速を上げる方法)。力むと、この順番がそろわず、ボールの行き先も毎回変わりやすくなります。
だから私は、力いっぱいより先に、動きの順番をそろえることをすすめています。
「8割で投げる」は、どんなときに使う?
「8割で投げろ」とよく言われます。ここでの8割は、速さではなく力の入れ具合のことです。
私も練習ではよく使いますが、何のために8割にするのかをはっきりさせることが大切です。
- フォームを覚える練習:ゆっくり・軽めのほうが、動きの順番を確かめやすいです。
- 試合や、球速を測るとき:全力で投げること自体は、悪いことではありません。
- 注意したいのは:全力を出そうとして、力みで動きが崩れることです。
「8割のほうが速い」とは言えません。8割は、動きを整える練習の目安と考えてください。
「軽く投げれば安全」ではない
先ほどの研究では、半分の力のつもりでも、ひじには全力のときの約75%の負担がかかっていました。
大学生の投手を調べた、別の研究もあります(Wolfら、2025年)。
- 大学生の投手19人が、本人の感覚で60〜100%の力で投げた
- 測ったフォームの項目では、はっきりした差は見つからなかった
- ひじの負担の指標は、60%と全力のあいだで差があった
フォームが全く同じと証明されたわけではありません。ただ、「軽く投げているつもりでも、ひじには負担がかかっている」ことは、この研究からも読み取れます。
力みで順番が崩れるかどうかは、私が指導の現場で見ている、また別の話です。
つまり、「軽く投げているから大丈夫」と考えて、たくさん投げるのは要注意です。軽く投げた球も、投げすぎを防ぐために球数に数えてください。
投げる量の目安は投げすぎを防ぐ目安にまとめています。
家でできる「力み」をとる練習
- シャドーピッチングで"ゆっくり→だんだん速く":ボールを持たずに、投げる動きだけをする練習です。まず力を抜いて、動きの順番を確かめます。スピードは後から(シャドーピッチングのやり方)。
- 投げる前に、肩をストンと落とす:両肩を一度ぐっと上げてから、ストンと落とす。肩がすくんだまま投げないための合図です。
- 土台のフォームが先:力みをとる練習が生きるのは、フォームの土台があってこそ。基本は投球フォームの正しい作り方で。
投Laboの考え方は、「気合いで全力」という根性論ではありません。
- 力まずに、動きの順番で投げる
- 怪我をさせない
- 課題は1つに絞る
私が現役で全力にこだわって失敗したからこそ、これをいちばん大事にしています。
自分の「力み」は、自分では気づけない
やっかいなことに、力んでいるか、順番がそろっているかは、投げている本人には見えません。
しかも、力みが出る場所は子どもによって違います。肩の子もいれば、腕の振り方や、足の運びに出る子もいます。
投Laboでは、スマホで撮った投球動画を投手専門コーチが分析し、保護者向け+お子様向けの2部構成レポートでお返しします。
初回の動画分析は無料なので、まずはお子さんの"力み"がどこに出ているかを知るところから始めてみてください。
まとめ
- 力を抜くと球速は少し下がるが、半分のつもりでも約85%出る(高校生の研究)。
- 大切なのは、力みで動きの順番が崩れていないか。
- 軽く投げても、ひじの負担はあまり減らない。軽い球も球数に数える。
- 試合で全力を出すこと自体は悪くない。8割は、動きを整える練習の目安。
「力いっぱい」より「動きの順番」。それが、遠回りに見えて確かな近道だと私は考えています。
よくある質問
Q. 「力を抜け」と言ったら、球が遅くなりました。なぜ?
力を抜けば、球速が少し下がるのは自然なことです。研究でも、力を抜くと球速は下がっていました。
見てほしいのは速さより、動きの順番がそろってきたかどうかです。そろってきたら、少しずつ力を戻していきましょう。
Q. 試合でも8割で投げたほうがいいですか?
必ずしもそうではありません。全力で投げること自体は悪くありません。
ただ、力んでフォームが崩れたり、ストライクが入らなくなったりするなら、少し力を抜いて順番を整えるのも一つの方法です。
Q. 球速を測るときは、全力で投げてもいいですか?
はい。ただし、体を温めてから、少しずつ強くして測ってください。肩やひじに痛みがあるときは、測らずに休みましょう。
準備の順番は投球前のウォーミングアップ、測り方は球速の測り方にまとめています。
Q. 力んでいるかどうか、親でも見分けられますか?
投げている本人は気づきにくいですが、外から見ている親なら、見分けるポイントがあります。投げる前に肩が上がる、表情がこわばる、投げ終わりにぐらつく。
動画のスロー再生で見ると、さらに分かりやすくなります。
Q. 力みをとる練習は何から始めればいいですか?
シャドーピッチングがおすすめです。まずゆっくり、動きの順番を確かめるところから。
やり方はシャドーピッチングの記事にまとめています。
※この記事は2026年10月に、研究を調べ直して内容を見直しました。以前は「力を抜くほど速くなる」と書いていましたが、そこまでは言えないことがわかったためです。