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野球をする子の睡眠時間、足りてる?学年別の目安とけが予防のコツ

公開 2026.10.28投手専門コーチ 野村亮太

夜の子ども部屋。枕元のスタンドライトの下で、使い込まれたグローブのポケットに白い野球ボールが1つ収まっている。奥のベッドでは子どもが後ろ姿で穏やかに眠り、机の上にはスマートフォンが伏せて置かれている。

「練習も頑張っているのに、なかなか上達しない」「最近、朝起きるのがつらそう」。そんなとき、見落とされがちなのが睡眠です。

私は元独立リーグの左ピッチャーで、今は投手を専門にみているコーチです。

選手の体を見ていて思うのは、上達とけが予防の土台は、特別な道具でも根性でもなく、地味な生活習慣だということです。なかでも睡眠は、栄養やアイシングよりも先に整えたい土台だと考えています。

結論: 小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間が目安です。睡眠が短い子はけがをしやすいという研究もあります。練習量を増やす前に、まず眠りを整えましょう。

この記事でわかること

  • 野球をする子に必要な睡眠時間の、学年別の目安
  • 睡眠不足がけがや回復とどう関わるのか(研究でわかっていること)
  • 家でできる睡眠の自己チェックと、今日から整える5つの習慣

野球をする子に必要な睡眠時間は?【学年別の目安】

結論から言うと、目安は学年で変わります。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、こどもの睡眠時間の目安を次のように示しています。米国睡眠医学会の指針を引用したものです。

学年睡眠時間の目安
小学生9〜12時間
中学生・高校生8〜10時間

成長期の子どもは、大人よりも長い睡眠を必要とします。

たとえば小学生が朝6時半に起きるなら、9時間の睡眠には夜9時半には眠っている必要があります。塾や宿題を考えると、意外とハードルが高いと感じる方も多いはずです。

ここで大切なのは、この数字はあくまで「目安」だということです。必要な睡眠時間には個人差があります。同じ時間寝ても、すっきりする子もいれば、まだ眠そうな子もいます。

「塾や宿題で、寝るのが遅くなる」——その不安、見過ごせません

保護者の方からよく聞くのが、こんな声です。

  • 「野球に塾に宿題で、寝るのがどんどん遅くなる」
  • 「週末の試合のあとは、疲れて昼まで寝ている」
  • 「大事な試合の前の日に限って、なかなか寝つけないみたい」

どれも、成長期の野球少年にはよくあることです。

忙しい毎日のなかで、睡眠は「削りやすいもの」になりがちです。だからこそ、睡眠が体にどう効いているのかを知っておくと、優先順位をつけやすくなります。

なぜ睡眠不足はけがにつながるのか——3つの原因

睡眠を削ると、投球にどんな影響があるのでしょうか。研究でわかっていることを中心に、3つに絞って見ていきます。

睡眠時間とけがの割合の比較図。8時間以上眠る子を基準の1倍とすると、8時間未満の子はけがをする割合が約1.7倍高いことを横棒で示す。関連であって因果ではない、という注記つき。

① けがをしやすくなることと関連する

中学生・高校生のスポーツ選手112人(平均15歳)を調べた研究があります。

この研究では、睡眠が平均8時間より短い子のほうが、けがをしていた割合が高めでした。8時間以上の子とくらべて、約1.7倍だったと報告されています(Milewski ら、2014年)。

ただし注意が必要です。これは「睡眠不足がけがの原因だ」と断定したものではありません。「睡眠が短いことと、けがの多さが、いっしょに見られた」という結果(=関連)です。

また、対象は中高生で、小学生だけを調べたものではありません。それでも、体を酷使する時期に睡眠が短いのは、けがの面から見てよくないという方向性は参考になります。

② 体の回復は、眠っている間に進む

練習で疲れた体は、休んでいる間に回復します。睡眠は、その回復を支える大切な時間だと考えられています。

深い眠りのときには、体の修復に関わる成長ホルモンが多く分泌されるとされています。

つまり、たくさん練習しても、眠りが足りなければ回復が追いつきにくくなります。睡眠は「練習を体に生かすための時間」でもある、とイメージするとわかりやすいかもしれません。

③ 日中の集中力・判断力が落ちる

睡眠が足りないと、日中の集中力や反応が鈍くなります。

打球への反応、とっさの判断、フォームを意識し続ける集中力。これらが落ちれば、プレーの質が下がるだけでなく、思わぬけがにもつながりかねません。

休養日の考え方については、投げすぎを防ぐ球数と休養日の目安もあわせて読んでみてください。

家でできる睡眠の自己チェック

「うちの子は足りているのかな?」。そう思ったら、まずは今の睡眠を数字で見てみましょう。

寝る前のチェックリスト図。4項目を信号のアイコンで示す。平日の睡眠が学年の目安に届いているか、就寝・起床の時刻が毎日そろっているか、寝る前1時間に画面を見ていないか、朝すっきり起きられるか。

次の4つを、3日ほど記録して確かめてみてください。

  1. 睡眠時間:平日の睡眠が、学年の目安(小学生9時間以上・中高生8時間以上)に届いているか
  2. 時刻のばらつき:寝る時刻と起きる時刻の、平日と休日の差が1時間以内におさまっているか
  3. 寝る前の過ごし方:布団に入る1時間前に、スマホやゲームの画面を見ていないか
  4. 朝の様子:目覚ましが鳴る前後に、自分で起きられているか

当てはまらない項目があれば、そこが整えどころです。とくに①の睡眠時間が目安に届いていないときは、まずそこから手をつけましょう。

なお、これは家庭で気づくための目安であって、医学的な判定ではありません。気になるときは、次の「5つの手順」から試してみてください。

睡眠を整えることは、けが予防のためにとても大切です。

ただ、睡眠が十分でも、投げ方そのものに体を痛めやすいクセがあれば、けがのリスクは残ります。そのクセは、動画でフォームを見てみないと気づきにくいものです。

今日から整える、眠りの5つの手順

睡眠は、ちょっとした習慣で変わります。難しいことはありません。今日からできる5つを紹介します。

子どもの寝室の枕元。木のサイドテーブルにアナログの目覚まし時計と読みかけの本が置かれ、スマートフォンは奥の棚に画面を伏せて置かれている。寝る前は画面を遠ざける習慣を表す一場面。

① 寝る時刻・起きる時刻をそろえる

毎日、同じ時刻に寝て、同じ時刻に起きるのが基本です。

  • 目安:寝る・起きる時刻の差を、平日と休日で30分〜1時間以内にそろえる
  • 親が見るところ:休日に昼まで寝ていないか
  • できているサイン:休み明けの朝も、つらそうにしていない

② 寝る60分前は、スマホ・ゲーム・動画をやめる

寝る前の画面は、脳を興奮させて寝つきを悪くします。

  • 目安:就寝の60分前には画面を手放す
  • 親が見るところ:布団のなかでスマホを見ていないか
  • できているサイン:布団に入って15分ほどで眠れている

③ 朝起きたら、光を浴びる

朝の光は、体内時計を整えて、夜の寝つきをよくします。

  • 目安:起床後はできるだけ早く(目安は30分以内)、カーテンを開けて朝の光を浴びる
  • 親が見るところ:朝食のときにカーテンが開いているか
  • できているサイン:夜、自然に眠くなる

④ 夕方以降のカフェインを控える

エナジードリンクは、子どもにはそもそもおすすめしません。コーラや濃いお茶にも、眠りをさまたげるカフェインが入っています。

  • 目安:エナジードリンクは時間に関わらず飲まない。コーラや濃いお茶も、午後3時をすぎたら1本も飲まない
  • 親が見るところ:練習後にエナジードリンクを飲んでいないか
  • できているサイン:夜、布団でそわそわしない

⑤ 試合の前夜に眠れなくても、あせらない

大事な試合の前日は、緊張で寝つけないことがあります。それでも、あわてなくて大丈夫です。大切なのは、前夜だけにこだわらず、ふだんから目安の睡眠を積み重ねておくことです。

  • 目安:寝る30分前からは部屋を暗くして静かに過ごす。眠れず焦るときは、いったん布団を出て、眠くなってから入り直す
  • 親が見るところ:「眠れない」と本人をあせらせていないか
  • できているサイン:次の日、ひどい眠気を引きずっていない

試合前の緊張については、試合前に眠れない・緊張する子への声かけでもくわしく書いています。

やりがちな勘違い——「週末の寝だめ」で取り返せる?

平日に削った睡眠は、週末の寝だめで取り返せる。そう考えている方は多いかもしれません。

結論から言うと、寝だめで取り返せるのは一部だけです。

休日に遅くまで寝ると、体内時計がずれます。すると日曜の夜に寝つけず、月曜の朝がまたつらくなる、という悪循環に入りがちです。

もうひとつ、ありがちな考えが「練習量を増やすほど上達する」という思い込みです。

睡眠を削ってまで量を増やすと、回復が追いつかず、けがや伸び悩みにつながります。これは根性で乗り切れるものではありません。量ではなく、質の高い練習と十分な回復をセットで考えることが大切です。

球数や練習量の目安は、投げすぎによる故障を防ぐためにも参考にしてください。

痛み・強い眠気があるときは(安全のために)

睡眠を整えることは大切ですが、体のサインは見逃さないでください。

  • すでに肩やひじに痛みがあるときは、投球をいったん止めて、整形外科で診てもらいましょう。痛みを我慢して投げ続けるのは、けが予防と正反対です。
  • 投げる球数や、試合で投げる間隔、疲れのサインにも気を配ってください。休養日の目安は休養日と球数の記事にまとめています。

次のようなサインが続くときは、小児科などの医療機関に相談してください。睡眠の問題がかくれていることがあります。

  • 十分に寝ても、日中に強い眠気が続く
  • 夜に、大きないびきをかく
  • なかなか寝つけない日が、長く続く

なお、睡眠のためにサプリメントや薬を自己判断で使うことはおすすめしません。まずは生活習慣から整えましょう。

睡眠を整えたら、次はフォームを見てあげよう

ここまで読んで、「まず睡眠から整えてみよう」と思っていただけたらうれしいです。

睡眠や栄養、休養は、けがをさせずに上達するための土台です。

ただ、土台を整えても、投げ方そのものに体を痛めやすいクセが残っていることがあります。

同じ悩みでも、原因は子どもによって違う

やっかいなのは、同じ「球が抜ける」「体が早く開く」でも、原因は子どもによって違うことです。

  • 体の硬さ
  • 体の開きの早さ(打者のほうへ胸が早く向いてしまうこと)
  • 腕の使い方

原因が違えば、やるべきことも変わります。

そして、この見極めは、文章や口頭の説明だけでは正確にできません。投げ方のクセについては、実際に動画でフォームを見るのが、いちばんの近道です。

なお、肩やひじに痛みがあるときは別です。痛みの原因はフォーム動画だけでは分かりません。まず投球を止めて、整形外科で診てもらってください。

もし「睡眠は整えてきたけれど、投げ方も一度見てほしい」と感じたら、投Laboの無料フォーム分析を使ってみてください。スマホで撮った動画から、今いちばん直したい課題を1つにしぼってお伝えします。

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まとめ

最後に、今日のポイントをおさらいします。

  • 睡眠時間の目安は、小学生9〜12時間・中学高校生8〜10時間(厚労省のガイド)
  • 睡眠が短い子はけがをしやすいという研究がある(関連であって、原因と断定はされていない)
  • 睡眠は体の回復を支える大切な時間。練習を生かす土台になる
  • まずは睡眠時間・時刻のばらつき・寝る前の画面・朝の様子を3日記録して自己チェック
  • 整え方は、寝起きの時刻をそろえる/寝る60分前は画面オフ/朝に光/夕方以降カフェインなし/試合前夜はあせらない

練習量を増やす前に、まず眠りを整える。それが、けがをさせずに長く野球を続けるための、いちばん地味で確実な一歩です。

最後に、保護者の方からよく聞かれる疑問にも答えておきます。

よくある質問

Q. 睡眠時間が目安に足りていれば、昼寝はしなくても大丈夫ですか?

夜の睡眠が足りているなら、無理に昼寝をする必要はありません。

ただ、練習や試合で疲れた日に15〜20分ほどの短い昼寝をするのは、午後の集中力の回復に役立つことがあります。長すぎる昼寝は夜の寝つきを悪くするので、避けましょう。

Q. 遠征や試合で、どうしても睡眠時間が短くなる日はどうすればいいですか?

ふだん十分に眠れているなら、その1日が短くなっても、あわてる必要はありません。

大切なのは、その前後の日にしっかり眠ることです。前の日だけ寝だめをするより、普段から目安の時間を確保しておくほうが、体はずっと楽になります。

Q. 寝る前にストレッチやアイシングをしたほうがいいですか?

軽いストレッチは、体をリラックスさせて寝つきを助けることがあります。

アイシングについては、使うタイミングや是非に議論があるので、アイシングの記事を参考にしてください。なお、寝る直前の激しい運動は、かえって目が覚めてしまうので避けましょう。

Q. 「もっと練習したい」と子どもが夜遅くまで素振りをします。やめさせるべき?

やる気はとても大切なので、頭ごなしに否定はしないであげてください。そのうえで、「睡眠も練習のうち」だと伝えてみてください。

眠って回復しないと、せっかくの練習の効果も生かしきれません。寝る時刻を決めて、その範囲でやることをおすすめします。

Q. 睡眠を整えたら、球速は上がりますか?

「〇時間寝れば球速が上がる」とは言えません。 睡眠は、あくまでけが予防と回復の土台です。

ただ、睡眠が足りて体が回復し、集中して練習できる状態をつくることは、上達の前提になります。遠回りに見えて、実は近道です。