ピッチャーの踏み込み足と膝|着地の「あと」に沈む子の直し方

ピッチャーのお子さん。 踏み込む前の足で、ひざがぐにゃっと曲がって沈んでいませんか。
「前の足で壁を作れ」とよく聞くけれど、どういうことか分かりにくいですよね。
結論: 大事なのは、着地した「あと」です。着地の「瞬間」の角度は気にしなくて大丈夫。着地のあとに前のひざが前へ折れて沈むと、ためた力が地面に逃げます。前の足で「壁」を作れるかが勝負です。
私は元独立リーグの左腕で、いまは投手専門のコーチをしています。 根性論ではなく、体の使い方と科学の両面から見ていきます。
この記事でわかること
- 踏み込み足の膝で本当に見るべき場所(着地の「あと」)
- 膝が沈む子の原因と、家でできるセルフチェック
- 前の足で立てる体をつくる練習ドリル
踏み込み足の膝は「着地したあと」に沈ませないのが正解
まず、いちばん大事なことからお伝えします。
踏み込み足(前の足)の膝で見るのは、着地した「あと」です。
着地した「瞬間」の膝の角度は、あまり気にしなくて大丈夫です。 研究でも、着地の瞬間の膝はおよそ40〜50度ほど曲がっていると報告されています(個人差はあります)。
ここで言う「沈む」は、着地の直後に少し曲がることではありません。 支えを失って、ボールを離すまで膝が折れ続けてしまうことです。
| 見るタイミング | ようす | ここで見る? |
|---|---|---|
| 着地の「とき」 | 膝は曲がる(約40〜50度) | 球速の差にはつながりにくい |
| 着地の「あと」◎ | 膝が沈まず支える=「壁」 | ここが勝負 |
| 着地の「あと」✕ | 膝が折れ続けて沈む | 力が逃げる |
前の足が「壁」になると、前へ進む体の勢いがそこで止まります。 止まった勢いが、上半身の回転に変わってボールへ伝わります。
逆に膝が折れ続けて沈むと、せっかくの勢いが地面に逃げてしまいます。
現場から: 私が動画でまず見るのは、前の足の着地のしかたと、ボールを離す瞬間の膝の角度です。着地してからリリースまで、膝が支えられているかを確かめます。
成人を対象にした研究では、前の足の踏ん張る力と球速に強い関連が報告されています。 腕の振りや後ろ足の蹴りだけでなく、前の足の「壁」も、球速を支える大事な土台だと考えられています。
こんな「前の足」、気になっていませんか
キャッチボールやブルペンで、お子さんの前の足を見てみてください。 次のようなクセは、よく見られます。
- 着地のあと、前の膝がぐにゃっと曲がって沈む
- 膝が外側に割れる
- 着地でぐらついて、体が流れる
- かかとからベタッと着いている
上の3つは、前の足で止まれていないときに出やすいサインです。 いちばん下の「かかとから着く」は、私が指導でいっしょに気にして見ている点です。
一つでも当てはまったら、この先を読んでみてください。
踏み出す足が外や内にズレて着く(向きのクセ)が気になる場合は、踏み出し足の向きの記事もあわせてどうぞ。
なぜ前の膝が沈むのか|よくある原因
原因は1つではありません。 子どもによくあるのは、次の3つです。
1. 前の足の筋力が、まだ育っていない
小学生・中学生は、体がまだ成長の途中です。 前の足1本で体を支える筋力が、追いついていないことがあります。
すると、着地のあとに膝が耐えられず、沈んでしまうことがあります。 私の指導では、こういう子にはフォームの確認とあわせて、前の足で立てる体づくりも取り入れます。
2. 歩幅を広げすぎて、届かせにいっている
遠くへ踏み出そうとすると、体が前のめりになりがちです。
現場から: 私の指導では、本人に合わない広さで前のめりに崩れている子は、歩幅を少し狭めて試します。無理に広げるより、前の足でしっかり止まれる位置のほうが、力が逃げにくいと感じています。
歩幅は自分で広げるものではなく、しっかり踏ん張れた結果として伸びるもの。 くわしくは歩幅(ストライド)の記事にまとめています。
3. かかとから着いて、踏ん張りが遅れる
現場から: 私がよく見るのは、かかとから着いてしまって、膝が曲がりすぎるクセです。かかとから着くと、足の裏全体が地面につくまでに少し時間がかかります。その間に、前の膝が折れてしまうのです。
※これは、すべての子に当てはまる決まりではありません。私が指導で感じていることです。着き方と膝の関係は、まだ研究ではっきり分かっていません。
実際に、こんな子がいました。 小学4年の右投げの子で、足の裏全体でちゃんと着いているのに、着いた「あと」に膝が前へ折れて、離すまで戻らないのです。
こういう場合は、着き方よりも「前の足で受け止める力」から見ていきます。
🔍 家でできるセルフチェック
スマホのスロー動画があれば、今日すぐ確かめられます。 横から(グラブをはめる手の側から)、ゆっくり撮ってみてください。
見るのは、着地した「あと」です。
次の3つを目安にしてみてください(合否ではなく、だいたいの手応えでOKです)。
- ①:着地した「あと」に、前の膝が前へ折れて沈まない(スロー再生で、10球見て8球くらい)
- ②:着地のあと、頭(または胸)が前の足の上まで来る
- ③:かかとからベタッとでなく、足の裏全体で着いている(これは私が気にして見ている点です)
全部そろわなくても、心配いりません。 前の足の力は、少しずつ育っていきます。
親が見るポイントは「着いたあと」です。 着地の瞬間ではなく、そのあと膝が沈まずに支えられているかを見てあげてください。
ここで1つ、気をつけてほしいことがあります。 お子さんに「膝を伸ばして着地しなさい」とは言わないでください。
着地の瞬間は、だれでも膝が曲がるものです。 無理に伸ばそうとすると、棒のように突っ張った、硬い着地になってしまいます。
伝えるなら「前の足でピタッと止まって、頭を前の足に乗せる」。 これくらいがちょうどいいのです。
ここまでで、「沈んでいるかどうか」はおうちでも見えてきます。 ただ、その先の「なぜ沈むのか」までは、肉眼ではむずかしいのが本音です。
原因が筋力なのか、歩幅なのか、着き方なのかで、やることは変わります。 同じ「沈む」でも、子どもによって本当にさまざまなのです。
まずは家でスロー動画を撮ってみてください。 撮り方は投球フォームの撮り方の記事にまとめています。
🏋️ 前の足で立てる体をつくるドリル
前の足の「壁」は、技術だけでなく、前の足で立てる“体”づくりもあわせると安定しやすいと感じています。 特別な道具はいりません。いつもの投球練習とは少し違う動きです。
全部やる必要はありません。 お子さんに合うものを選び、痛みが出たら回数の途中でもやめてください。

1. 片足で着地してピタッと3秒
ゆっくり踏み出して着地し、前の足1本で3秒止まります。 膝が前に折れず、頭が前の足の上に乗る位置で静止します。
- 回数:左右 5回 × 2セット
- 親のチェック:着地のあと、膝がぐらつかず止まれているか
- できているサイン:ふらつかず、3秒ピタッと立てる
2. 横向きジャンプで前の足に「ピタッ」
横に小さくジャンプし、前の足1本で「静かに」着地して3秒止まります。 ひざと股関節を軽く曲げてやわらかく受け止め、そのあとピタッと止まるのがコツです。
- 回数:左右 5回 × 2セット
- 親のチェック:着地の音が小さく、そのあとふらつかず止まれているか
- できているサイン:静かに止まり、体が流れない
3. 後ろ足を台にのせた片足スクワット(ブルガリアンスクワット)
後ろの足を低いイスや台にのせ、前の足1本でゆっくりしゃがみます。 前の膝が、つま先より大きく前に出ないように気をつけます。
- 回数:左右 8回 × 2セット(まずは少なめから)
- 親のチェック:膝が内側に入らず、前の足で支えられているか
- できているサイン:ぐらつかず、前の足のお尻・ももに効く
- 注意:自重でもふらついて難しい子がいます。まずは動きを見てあげて、安定してできる範囲で。痛みが出たら中止してください
4. ランジ(前に踏み出す)
その場から前へ一歩踏み出し、前の足でしっかり受け止めます。 前の膝が、つま先の上あたりで止まるのが目安です。
- 回数:左右 8回 × 2セット
- 親のチェック:着地のあと、上体がぐらつかないか
- できているサイン:前の足1本で、体をまっすぐ支えられる
これらは「前の足で立てる体」をつくる土台です。 自重トレの進め方は自重トレーニングの記事も参考にしてください。
やりがちなNG|「広く」「低く」で前の足が沈む
よく言われる「歩幅を広げろ」「低く投げろ」。 でも、これが前の足を沈ませる原因になることがあります。
「広く」しすぎ
遠くへ届かせようとすると、体が前のめりになりがちです。
現場から: 私の指導では、歩幅が本人に合わず前のめりに崩れている子に、「歩幅を半歩せまく」と伝えます。無理に広げるより、前の足でしっかり止まれる位置のほうが、力が逃げにくいからです。
歩幅は、広げるものではなく「結果として伸びる」ものです。
「低く」しすぎ
低く投げたいとき、膝を沈めて低くすると折れやすくなります。 私は、膝を沈めすぎて低くしている子に、上体を少し前に傾けて低さを出すよう伝えることがあります。 無理に深く倒すわけではありません。
下半身全体の連動は下半身の使い方の記事にまとめています。
「伸ばせば速くなる」は、ちょっと待って
「膝をしっかり伸ばせば速くなる」と、単純に考えないでください。
高校生を調べた研究では、前の膝をよく伸ばす投げ方は球が速くなりやすい一方で、ひじへの負担も大きくなる傾向がありました。 だから“伸ばすこと”を目標にするより、まず沈まない体をつくるのが先なのです。
痛みが出たら、投球を止めて受診を
練習の前に、1つだけ守ってほしいことがあります。
すでに肩やひじ、腰や膝に痛みがあるなら、投球を止めて整形外科へ。 「少し痛いけど投げられる」は、様子見にせず相談してください。
成長期の子どもは、投げすぎが故障の一番の原因です。 1日の球数と、しっかりした休みを大切にしてください。
正しい投球フォームの全体像は、投球フォームの基本5ステップにまとめています。
まとめ
踏み込み足の膝で見るのは、着地の「あと」です。
- 大事なのは、着地のあとに膝が沈まず「壁」になること
- 沈む原因は、前の足の筋力・広げすぎ・着き方などさまざま
- まず作るのは、前の足で立てる体(スクワットやランジ)
今日のキャッチボールから、スロー動画で「着いたあと」を見てあげてください。
そのうえで「なぜ沈むのか、原因が分からない」と感じたら、一度フォームを動画で見せてください。 投Laboでは、初回の動画分析を無料で行っています。
横からと後ろからのスマホ動画で、前の足の着地と膝の動きまで見ます。 そして、今いちばん直すとよい「1つ」をお伝えします。
気になる方は、無料フォーム分析からお気軽にどうぞ。
よくある質問
Q. 前の膝は、少し曲がっていてもいいのですか?
はい、着地の瞬間は曲がっていて大丈夫です。 大切なのは、着地した「あと」に膝が前へ折れて沈まないこと。 むしろ「まっすぐ伸ばせ」と無理をさせないであげてください。
Q. 「前の足で壁を作れ」と言っても、子どもに伝わりません
言葉と、実際の動きはよくズレます。 私は「つま先で着地するつもりで」と伝えます。 そう意識すると、実際には足の裏全体でちょうどよく着けることが多いからです。
Q. 低学年の子に、ブルガリアンスクワットはやらせていいですか?
重りは使わず、体重だけで行えば取り組めます。 ただ、自重でもふらついて難しい子もいます。 まずは動きを見てあげて、安定してできる範囲で。痛みが出たら、すぐにやめさせましょう。
Q. 前の膝が「外に割れる」のも、沈むのと同じ原因ですか?
近い部分もありますが、同じとは限りません。 外に割れるのは、踏み出す方向や股関節の使い方が関わることもあります。 気になるときは、動画で踏み出しの向きから見ていくのが確実です。
Q. 前の足を直すと、球速は上がりますか?
上がる子もいますが、「膝を伸ばせば速くなる」という単純な話ではありません。 まずは力が逃げない、安定した着地を目指すのが先です。 速さだけを追うと、ひじや肩の負担が増えることもあります。